テレビ東京ドラマBiz「ヘッドハンター」。江口洋介のファンなので、興味を持ちました。ヘッドハンター第2話では、ヘッドハントを受けて転職する従業員の競業避止義務の問題がさりげなく取り上げられています。
「あなたにとって一番大切なものはなんですか?」。
会社でのポジション、築き上げたプライド、家族、それとも仲間?
江口洋介演じる黒澤和樹のセリフが、ぐっときます。
終身雇用が崩れ、労働類似の働き方が増加(注)する現代日本社会で、なんのために働くのか、働くことの意味、就職(新卒一括採用における就社ではなく)するとはなんなのか。自分自身が本当に求める、望んでいる生活様式を見つめ直してみるのにもいいドラマだと思います。
ちなみに、「こちらが会社の提示した労働条件です」と、ヘッドハントする際に、会社が提示した労働条件の書面を渡す場面で、厚生労働省モデル様式の「労働条件通知書」が使われていました。
実際のヘッドハンティングでは、会社独自の様式が使われているのかもしれませんが、厚労省のモデル様式がテレビで使用されるくらいメジャーになってきたというか、「時代考証」としてモデル様式が採用されるようになったのに、感心しました。
実は、私は開業当時はオリジナルの様式を顧問先等に提供していましたが、労働基準法等の改正のたびに記載事項が追加になり、法令順守を優先して、今ではモデル様式の使用をお勧めしています。(万が一、記載義務があるのに漏れていたら、社労士の善管注意義務違反になりますので)
「ヘッドハンター」の最新放送分は、TVer(ティーバー)で視聴できます。
TVがなくてもいい時代になりました。
(注)ところで、労働類似の働き方をめぐって、厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」が報告書をまとめていますし、さまざまな関心がもたれ、ますます増えていくと思います。この問題を考える時、私は、ILO(国際労働機関)の「雇用関係に関する勧告」(第198号、2006年)が重要だと感じています。
働くという意味や価値観の問題と、労働法制上の保護の問題は、ちがう論点で取り組むことが必要ではないでしょうか。
「雇用関係に関する勧告」では、「加盟国は、雇用関係が存在することについての明確な指標を国内法令又は他の方法によって定義する可能性を考慮すべきである。これらの指標には、次の事実が含まれ得る」と述べており、その指標というのは、次のような内容です。
(a) 仕事が他の当事者の指示及び管理の下で行われていること、仕事が事業体組織への労働者の統合を含むものであること、仕事が他の者の利益のために専ら若しくは主として遂行されていること、仕事が労働者自身で行われなければならないものであること、仕事がこれを依頼する当事者が指定若しくは同意した具体的な労働時間内若しくは職場で行われていること、仕事が特定の存続期間及び一定の継続性を有したものであること、仕事が労働者に対して就労可能な状況にあることを要求するものであること、又は仕事がこれを依頼する当事者による道具、材料及び機械の提供を含むものであること。
(b) 労働者に対する定期的な報酬の支払があること、当該報酬が労働者の唯一若しくは主な収入源となっていること、食糧、宿泊及び輸送等の現物による供与があること、週休及び年次休暇等についての権利が認められていること、労働者が仕事を遂行するために行う出張に対して当該仕事を依頼する当事者による支払があること、又は労働者にとって金銭上の危険がないこと。