読売新聞3月13日付朝刊に興味深い記事が載っていた。
ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー米エール大教授が同紙のインタビューに応じた内容だ。シラー教授の専攻は、金融経済学。著書には『投機バブル・根拠なき熱狂――アメリカ株式市場、暴落の必然』(ダイヤモンド社)などがある。サブプライムローンのバブルを警告していた。
シラー教授は、10日に安倍晋三首相と面会し、12日には東京都内で講演していた。
読売新聞のインタビューで、シラー教授はアベノミクスをあらためて評価した。
興味深いのは、続きである。
同紙の記事によれば、シラー教授は、「安倍政権が、派遣制度の規制緩和などの導入で、柔軟な雇用制度の実現を目指していることについて、『長期雇用の伝統に支えられた日本企業の良さを失わせる可能性がある』と指摘し、慎重に対応すべきだと注文した」とのことだ。
規制緩和万能に考えていると、米国の自由主義を導入すればうまくいくと思いがちだが、こと雇用に限っては、規制緩和が日本経済にとってマイナスになることを示した発言だ。日米の雇用の違いを知っていると、極めて常識的な発言であり、実は驚くことではない。
たとえば、有期雇用契約期間(5年)を延長するというのは、米国のような解雇自由のような国では、有期雇用制度というのは、逆に「あなたを(その期間は)絶対解雇しません」と雇用を保障するルールになる。制度の持つ意味が日本とはまったく違ってくる。
また、米国では、予算教書が議会に提出され、中間選挙を控えて、オバマ大統領がめざす政策が具体的にあらわれてきた。低中所得層の雇用創出や税制優遇措置、教育など、経済格差の是正に力を入れている。注目されるのは、日本ではバラ色のように描かれている「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度について、オバマ大統領が見直しを指示したことだ。
オバマ大統領はサラリーマン何百万人が残業代の保護を受けられるように見直すように、労働省長官に指示する大統領覚書に署名した。(President Obama Signs Memorandum to Update Overtime Pay:The White House)
米国では、週40時間超の労働時間に対し、5割増の割増賃金を支払わなければならない。「ホワイトカラー・エグゼンプション」の対象者(週給約455ドル以上の管理職や専門職など)は、割増賃金の適用除外となり、日本の管理監督者よりも対象が広く、事務職の一部も含まれている。
ホワイトハウスの発表によると、もともとは高賃金のホワイトカラーを対象にした例外だったが、今では年間2万3000ドルの労働者も対象になっている。オバマ大統領は、それは間違っているとして、サラリーマン何百万人が残業代の保護を受けられるように見直しを指示した。
中小企業の振興と中間所得層の復活を車の両輪で考えていくのが、日本の経済発展につながると、私は思っている。